ブログ記事 相続登記における職印証明書の可否
今日は、「遺産分割協議書に、弁護士の先生が、相続人に代わって署名・捺印した場合、相続登記申請時に、弁護士会発行の職印証明書が利用できるか?」についてです。
1.遺産分割協議書に添付する印鑑証明書の規定
前提として、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書の規定は、提出先により異なります。
例えば、
預金の解約払戻しであれば、当該金融機関の規定に従う必要があります。
不動産の相続登記であれば、法務局の規定に従う必要があります。
2.相続登記における職印証明書の可否
遺産分割協議書に、相続人の代理人として、弁護士の先生が、署名捺印するケースがあります。
その場合、印鑑証明書の「種類」について、注意が必要です。
弁護士会発行の職印証明書は、
相続登記に使用する遺産分割協議書添付の印鑑証明書としては認められていません。
つまり、弁護士の先生が「事務所住所」を記載し、「弁護士会発行の職印証明書」を添付した遺産分割協議書は、相続登記には使用できないのです。
弁護士の先生が、「個人の自宅住所」を記載し、「個人の印鑑証明書」(市区町村発行の印鑑証明書)を添付する必要があります。
3.実際のケース(遺産分割協議書の再作成)
上記のような「事務所住所」記載・「職印証明書」添付の遺産分割協議書が完成した場合・・・
金融機関の解約払出しはスムーズに完了したのに、相続登記手続きができない!という事態が発生するケースがあります。
(金融機関では、一般的に職印証明書が認められます)
その場合は、下記のどちらかの遺産分割協議書を再作成することで解決を図ることになります。
①弁護士の先生が、「個人住所」を記入し、「個人の印鑑証明書」を添付していただく
②「相続人」の方が、直接、遺産分割協議書に署名捺印し、相続人の個人印鑑証明書を添付してていただく
(※相続登記用に不動産についての記載のみの遺産分割協議書で可)
4. 根拠について
なぜ、職印証明書は認められないのかという根拠ですが、
「職印証明書が認められる」という規定が現状はないから、ということになります。
ちなみに、登記義務者として添付する印鑑証明書(所有権移転や抵当権設定)については、個人のものが必要であるという規定があります。(不動産登記令第16条第2項)
また、印鑑証明書の添付の根拠については、下記の先例となります。
「遺産分割協議書を添付して相続登記を申請する場合には、遺産分割協議書の押印の真否認定に関し、申請人を除く協議者全員の印鑑証明書の提出を要する」
(昭和39年4月23日民甲742号)