ブログ記事 遺言執行者の通知義務
2019年7月に相続法の大きな改正がありました。今回は、改正点の1つである「遺言執行者に通知義務が課された」ことについて、お伝えしていきます。
あまり注目されませんが、実務に携わる中で、大事なポイントだと感じています。
1.遺言執行者の通知義務とは
遺言執行者は、相続人全員に対して下記の3つのことを、知らせる必要があります。
①就任の通知(民法1007条2項)
②財産目録の交付(民法1011条)
③任務終了の報告(民法1012条3項で準用する民法645条)
2.通知が義務付けれられた背景
改正前は、通知を義務付けた明文はありませんでした。
例えば、亡くなった人が公正証書遺言※を残していると、
受遺者(遺言で財産をもらう人)以外の相続人が関与することなく、遺言執行者が遺言内容の執行手続きを進めることができました。
(※公正証書遺言は、家庭裁判所での遺言検認手続きが不要なため、戸籍収集して相続人全員を確定したり、他の相続人に通知がいくことがありません。)
これは、「3」に記載する遺留分との関係から、トラブルとなる場合がありました。
3.遺留分>遺言
相続人(兄弟姉妹を除く)には遺留分(民法1042条以下)という制度があり、
最低限の相続分を請求する権利が認められています。
遺留分は、たとえ遺言で「相続人Aに遺産全部を相続させる」と記載されていても、他の相続人Bに守られる権利分なのです。
亡くなった人の意思なのだから、遺言内容が最優先だと勘違いされている方もいらっしゃるので注意が必要です。
受遺者以外の相続人であっても、遺言内容を知り、場合によっては遺留分を請求するケースがあるのです。
4.最後に
身近な親族が相続人が「受遺者かつ遺言執行者である」場合は、早々に相続財産の承継手続きを進めようとするケースがあります。
疎遠な相続人は相続発生や遺言内容を知らないまま相続手続きが終わり、あとからトラブルの原因になることもありました。
改正により、遺言執行者には、相続人全員に遺言内容の通知義務が課せられましたので、ご注意ください。
2021年09月08日 09:00